できないKJ

言語聴覚士(療育)

問題行動の背景には何が

毎日、保育者を自分で選ぼうとし、思い通りの保育者がそばに付いてくれないと気持ちが落ち着かず暴れてしまうA君の話である。彼は重度の知的障害だ。

A君とのやりとり❶

ある日

私「Aくん。今日は先生がつきます。」

A「いやーいやー」と私の元から離れて、別の保育者の所に行ってしまう。

私「Aく~ん」と近づく

A「や~だ<(`^´)>。」ともはや収集がつかない程に抵抗する。壁をたたく。物を投げる。

 

こうなれば、私の最終手段!!

 

 

…オロオロする!!

 

 

A君とのやりとり❷

しばらく経った別の日である

私「(最初からオロオロしながら)Aくん。今日はよろしく」とAの横に座る

Aは特に気にしていない(^^♪

 

おお、これは遂に私が選ばれる時が来たのだ( ;∀;)長かった数カ月。毎朝A君に当たっていないかヒヤヒヤしながら、オロオロと通勤してきた甲斐があったぜぇ!

 

A君は私の優しさに気付いて、居心地がよくなったんだ(^_^)v

 

 

A君とのやりとり❸

また、別の日

この日もA君の担当であった。しかし、もうKJは大丈夫。自信満々にA君に近づきながら、親愛の情を込めて
私「Aくん。今日は担当するよ~」と余裕の微笑で話しかけ…

A「いやー、いやー」

私「!?」

A君は別の保育者の元に走って行こうとする。

私「待って!!」とA君の手を掴む。思い出してくれ!私の優しさを~

泣き出すA。私を蹴り、壁をたたく。

 

仕方ない。奥の手だ。

 

 

オロオロする!!

 

 

もう大丈夫だと思ってたのにぃ(;_:)。なぜだ。私の何が…

 

問題行動を分析する

知的障害やASDの問題行動を分析する際、その行動にどのような意味があるのかを考える必要がある。具体的には次のような意味が隠されていることが多い

①要求:~してほしい

②注目:かかわってほしい

③回避・逃避:やりたくない

④感覚強化:好きな感覚に浸る

⑤感覚回避:いやな感覚から逃げる

 

④⑤番は自傷行為などを思い浮かべると理解しやすい。自分の顔を叩く子がいるとする。④では、強い衝撃が好きで手持無沙汰な時に自傷行為がでるかもしれない。⑤では、例えば嫌な臭いを忘れるために自傷行為をしているのかもしれない。

 

A君の場合はどうだろう。保育者を代えてほしいという要求がありそうだし(①)、好きな保育者にかまってほしい(②)、嫌な保育者から逃げたい(③)もありそうだ。しかし、好みの保育者が日によって変わる。これはどういう意味を持っているのか、私は分からずにいた。

 

 

本質に気付いたのは保育士さんだった。A君は長袖の時にしか寄ってこないと。ていうか、こういう子どもに対する気付きで保育士さんの横に出るものはいないな(;'∀')情けないが、勝てる気がしない(;^_^A

 

A君とのやりとり(検証)

こうなれば、検証である。

私はA君の担当に当たった日、長袖を着用して臨んだ。

 

私はおそるおそるA君に近づく
「Aく~ん。ky…」

言い終わるのも待たず、A君は私に寄ってきて自ら手を伸ばした。

 

そうだったか。なんか複雑な気分だが、仮説は実証された。A君は私の優しさではなく、長袖にひかれていたのである(;´Д`)。

 

問題行動の本質…このケースの場合

A君は普段から半袖。保育者も半袖だと、肌と肌が触れ合うからそれが嫌なのだと気づく。これは⑤だね。