できないKJ

言語聴覚士(療育)

乗り越えられない壁

 

しずかちゃんとパパ

今季のドラマで地味~に毎週愉しみにしているのが「しずかちゃんとパパ」だ👇

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簡単に言うと、鶴瓶が演じる聾者(耳の聞こえない)の父と、吉岡里帆が演じる健聴者の娘の二人家族を取り巻くホームドラマ。このドラマは流石NHK。聾者の親と健聴者の子ってこんな問題を抱えるんだなぁって、毎週多くの気付きをもらっている。しっかり取材してるんだろうなぁ(p_-)

 

パパ、自転車の壁にぶつかる

私の住む地域では、8/8(火)に第三話が放送された。父(鶴瓶)はカメラマンを本業としているのだが、第三話ではバスの路線の廃止に伴って、移動手段に自転車の練習をする姿が描かれる。娘(吉岡)は父のまっすぐな姿を応援して練習に付き合うが、おばさん(戸田恵子)から三半規管に障害のある彼に自転車は無理だと言われてしまう。父の障害のことを詳しく知らなかった娘はショックを受ける。

ここで登場するのが、町の再開発を目指す企業の社員(中島裕翔)だ。彼は他人の感情を読み取るのが苦手でややASD自閉症スペクトラム障害)の特性を持った青年として描かれている。この青年が吉岡に生きづらさを克服するヒントを与えてくれる。

 

娘(吉岡):今回はほんとわかんなくて、どうしたらいいか。もっと励まして一緒に練習したら、パパは自転車に乗れるようになるかもしれない。だけど、思っちゃうんですよね。もしそれでパパが自転車で事故にあったりでもしたら、私絶対後悔するって。

青年(中島)は軽くうなずく

(中略)

娘:悔しい。乗り越えられない壁ってあるんだなぁって

青年:乗り越える…壁をですか?

娘:あっはい

青年:それは建築物の外壁、もしくは内部を間仕切る内壁ではなく、いわゆる塀のことですか?

娘:あ―ですね…ごめんなさい。

青年:いえ、壁と言う言葉には広義に塀も含まれますから。

娘:はぁ

青年:壁は乗り越えてはいけません。

娘:えっ!?

青年:必要だからそこにあるんです。道を歩いていて壁に突き当たったときに、乗り越えようとしている人を僕は見たことありません。

娘:私もないです。

青年:乗り越えるのはおそらく…泥棒と忍者くらいです。

娘:泥棒と忍者…

青年:そういうときは、引き返して別の道を探すものかと

娘:確かに

 

こんな淡々としたやりとり。よくドラマにしたな( `ー´)ノって突っ込みたくなるほど、盛り上がらないシーンだが。

 

たまらなく好きだーーーー

 

そして二人の会話は発展していき…

娘:なんか全然頑張ってないような…

青年:目的は頑張ることではなくて、壁の向こうにあるどうしても行きたい場所へいく事ですよね?

娘:(目を見開いて)なるほど。

青年:塀を含む壁の役割は守る事ですから、何かを何かから大切に守っているんです。壁は。だから、簡単に乗り越えようとするべきではないと僕は思います。

 

そして、娘は補助輪とラジカセ(音を出して周りの人に気付いてもらうもの)付きの自転車を父に送る

 

療育現場に置き換えて

私たち療育・教育の関係者も、障害を克服するためにこども自身の努力を求めてしまいがち。それが悪い事だとは思わないけど、その壁の難しさは関わる大人が判断してあげる必要があるし、避けて通る快適な道を模索してあげることが必要な場合もあるんだよね。

 

ドラマのあらすじ話すだけで、私の発信したいメッセージになってしまう。なんて便利なドラマなの~('ω')ノ

 

 

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